世界的な新型コロナウイルスの猛威が明けて、訪日外国人客の回復が見えてきました。
飲食業界は、新型コロナウイルスの流行が原因で訪日外国人の人数が低下したため、大きな打撃を受けました。その傷跡を埋めるべく、これから先の集客対策を考える必要があります。
この記事では、訪日外国人客を集客するための戦略について紹介します。最後まで読むことで、持続可能なインバウンド集客で飲食店を成功させることができるでしょう。
インバウンド戦略の基礎と重要性

飲食業界における「インバウンド」とは、日本を訪れている外国人のことを指します。
飲食店の売上を伸ばすためには、サービスの向上はもちろん、新規のお客様を獲得しなければなりません。お客様というのは、国内だけでなく日本へ訪れる訪日外国人客も含みます。
インバウンドの基礎を知り、戦略を立てていくことが重要です。
- 訪日外国人市場の現状とインバウンドの機会
- 成功への第一歩:インバウンド集客の基本理解
上記2つについて解説します。
訪日外国人市場の現状とインバウンドの機会
現在の日本は、消費者庁の調べによると少子高齢化により消費者人口が年々減少しています。今後、日本国民の食品や物の消費量は低下を続けるでしょう。
このような状況で日本経済を支え期待されるのが、訪日外国人客のインバウンド消費です。
日本政府観光局の報道によると、2023年12月の訪日外国人客数は2019年同月比108.2%となる2,734,000人。
新型コロナウイルス拡大後で単月過去最多となるとともに、12月として過去最高を記録しています。また、2023年の年間の訪日外国人客数は25,066,100人となり、4月の水際措置撤廃以降、訪日外国人客数は右肩上がりで急回復を遂げました。
単独月では10月に初めて2019年同月比100%を超え、年間累計では2019年比78.6%と8割程度まで回復が進んでいます。
参考:消費者庁|第1部 第1章 第2節 社会経済情勢の変化と消費生活
参考:日本政府観光局(JNTO)|訪日外客数(2023年12月および年間推計値)2024年1月17日
成功への第一歩:インバウンド集客の基本理解
インバウンド集客とは、主に訪日外国人客に対してのマーケティング手法を指します。目的は、訪日外国人客へ商品やサービス提供を実施した売上増加です。
インバウンド集客は、飲食店の魅力を伝えるとともに経済を活性化させる役割も果たしています。
施策としては、SNSを活用したデジタルマーケティングや多言語に対応したWebサイト、ブログ、コミュニケーションツールを経由した問い合わせなどがあります。
飲食業界だけでなく、インバウンド集客はさまざまな業界に不可欠な要素です。
インバウンド集客成功のためのデジタル戦略

飲食店のインバウンド集客では、多言語に対応しているSNSを活用して情報発信するのも有効な手段です。
たとえば、訪日外国人客が写真と英語で発信したInstagramの投稿は、日本のユーザーだけでなく世界のユーザーにも拡散されます。
その投稿が膨大なフォロワーのいるインフルエンサーによって拡散されれば、集客の効果は絶大です。
- SNSを活用した集客方法と事例
- 旅行サイトへの掲載とGoogleMapsの口コミ活用
デジタル戦略として上記の2つを紹介します。
SNSを活用した集客方法と事例
訪日外国人客は、飲食店を検索する際にブログやSNSを中心に情報を得ています。
SNSは、写真や動画、ハッシュタグで情報を発信できるため、たとえ言語がわからなくても飲食店の魅力を伝えることが可能です。
飲食店のWebサイトを外国人向けに公開するとなると、多言語に対応させるための金銭的コストや手間がかかります。
その点においてSNSは、投稿内容やハッシュタグを上手く活用すれば、訪日外国人客に対してコストをかけずにアピールができるのが大きなメリットです。
実際にSNSを活用した集客事例があるので参考にしてみてください。
「京都市|舞妓変身スタジオ四季のInstagram運用」
京都で舞妓変身を体験できる「舞妓変身スタジオ四季」はInstagramアカウントを使って訪日外国人客の集客を成功させています。
投稿は日本語で行っていますが、「#kyoto」「#maiko」「#geisha」「#japan_trip」「#discoverjapan」などの英語のハッシュタグをつけて訪日外国人客に対しアピールしているのが特徴です。
このような投稿の仕方で、日本人だけでなく外国人からのコメントも多数寄せられています。
また、Instagramから公式サイトに飛べば、英語や中国語などで閲覧できる仕様です。
このように、完全な外国人向けのアカウント運用にせず、ハッシュタグを上手く活用してインバウンド集客をしています。
「岐阜県高山市|世界的な人気アニメ映画『君の名は』を取り入れたPR」
岐阜県高山市は、世界的な人気を博したアニメ映画「君の名は」で有名になりました。
以前から高山市はインバウンド対策に熱心に取り組んでいました。「君の名は」の大ヒットはさらに拍車をかけ、インバウンド集客が伸び、多くの訪日外国人客が高山市へ訪れています。
岐阜県高山市はInstagramを使ってPR施策をしており、ハッシュタグ「#hidatakayama」を始め、投稿に応じてさまざまな英語と写真を投稿しています。
人気アニメの影響を上手く取り入れたインバウンド対策です。
SNSは基本無料利用でき、気負わずにすぐに取り入れやすいツールなので、飲食店のPRでも大いに活用できます。
ぜひ試してみてください。
X(旧Twitter)とInstagramの効果的な使い方
SNSの代表として、X (旧Twitter)とInstagramがあります。先に述べた事例のように上手く活用すれば飲食店のインバウンド集客が可能です。
2つのSNSのユーザー数と特徴は以下のとおりです。
SNSの種類 | アクティブユーザー数 (世界) | 特徴 |
X (旧Twitter) | 5億5,600万人 | ・拡散力がある ・動画と記事を連動できる ・投稿が簡単 |
20億人 | ・写真や画像、動画が中心の投稿 ・ハッシュタグの拡散力が大きい ・目に止まりやすい |
X (旧Twitter) は「何しているのか」をリアルタイムで投稿できます。テキストは140文字内と気軽に書けるため誰でも簡単にできるのが特徴です。
流行りのハッシュタグを付けることで多くの人の目に止まり、リツイート機能により投稿内容の拡散が可能なので、日本で最も利用されているSNSです。
Instagramは、世界的にX (旧Twitter)よりユーザーが多いSNSになります。
Instagramには、X(Twitter)のリツイートのような拡散機能はありませんが、写真や画像、動画の投稿が多く、言語が分からなくても共感を生みやすいツールです。
SNSで飲食店の魅力的な写真やテキストを投稿して、訪日外国人客の欲求を刺激することが可能です。
TikTokとFacebookで訪日外国人を引き寄せる
TikTokは、比較的新しいツールで短い動画を投稿できるのが特徴です。ユーザーも多いので拡散力があります。
Facebookはアクティブユーザー数(世界)が29億5,800万人と大規模なSNS。
世界で最も多く利用されているのでマーケティングの効果が大きく、ハッシュタグにより拡散されやすいです。ユーザーとのつながりの強さも大きな特徴です。
TikTokとFacebookは両方とも世界的に拡散力があるため、訪日外国人客を呼び込む手段として活用できます。
たとえば、訪日外国人客の多くは「日本食を食べてみたい」と考えています。
初めて来る訪日外国人客は、東京、大阪、京都などの主要都市へ出向きますが、慣れてくると田舎の農山漁村などにも行くようになります。
猫島などがそのいい例ですよね。
TikTokやFacebookに投稿すれば、行きそうにない場所でもインバウンド集客することは可能です。
旅行サイトへの掲載とGoogleMapsの口コミ活用
日本食を食べることは、訪日外国人客の日本旅行の楽しみのひとつです。誰でも旅行の際には、旅行先の飲食店の情報を調べます。
訪日外国人客も同様で、旅行サイトから「どのような飲食店があるのか」「メニュー」「支払方法」「アクセス方法」「口コミ」など細かくチェックしています。
飲食店の情報が分かりやすく魅力的であれば、インバウンド集客へ繋がります。
近年、その際に良く使われているのがGoogleMapsです。
- 圧倒的な利用者数
- 口コミの多言語対応が自動化
- 国内、国外の集客が同時にできる
上記3つのポイントがあげられます。
これから先のインバウンド対策は、口コミでの情報発信が最優先となるでしょう。Googleは、最も使われている検索エンジンです。
しかも、GoogleMapsに投稿された口コミは、ユーザーが使用している端末の設定言語に自動翻訳されるため、日本語で投稿しても世界へ拡散されます。
口コミの拡散はインバウンド集客の対策として大変有効です。GoogleMapsの口コミを大いに活用しましょう。
飲食店で実践すべきインバウンド対策

飲食店での効果的なインバウンド対策としては、以下の3つがあげられます。
- 外国語メニューの重要性と多言語化のコツ
- 無料Wi-Fiとキャッシュレス決済の導入メリット
- ホームページ多言語化とMEO対策
順番に詳しく説明していきましょう。
外国語メニューの重要性と多言語化のコツ
飲食店の場合は、訪日外国人客に対応したメニューの準備や看板の設置が、インバウンド集客の重要なポイントとなります。
日本語が堪能な訪日外国人客であっても、複雑な日本語のメニューは難易度が高いので、外国語に対応したメニューが用意されているとかなり喜ばれます。
特にアレルギーや宗教的な理由から特定の食材を避けたい場合に、内容が確認できるのは安心できるためです。
言語だけでなく画像も一緒に載せておけば、訪日外国人客に分かりやすいでしょう。
メニューだけでなく、飲食店の外の看板にも外国語の対応をしておくとインバウンド集客の対策になります。
無料Wi-Fiとキャッシュレス決済の導入メリット
訪日外国人客は情報収集のために、無料Wi-Fiのある場所を好んで利用する傾向があるため、Wi-Fiは、飲食店のインバウンド集客において効果的な対策です。
外国によっては日本よりWi-Fiの設置が進んでいる国もあるため、Wi-Fiが使えないことに不便さを感じてしまうのです。
訪日外国人客の満足度と集客を高めるために、無料Wi-Fiを設置しておくとよいでしょう。また、飲食店のキャッシュレス決済はインバウンド集客につながります。
訪日外国人客は、現金の支払いよりもクレジットカードやスマホでのキャッシュレス決済が便利だと感じています。
現金のみの支払いだけでは、会計時に日本円が足りない場合に訪日外国人客は飲食店の利用ができません。
キャッシュレス決済を導入することは、訪日外国人客の利便性を上げるだけではなく飲食店にもメリットがあります。
- 現金の過不足などのミスが減る
- スタッフの負担の軽減
キャッシュレス決済ができるようになったら、店外やレジに表示しておくと、飲食店を探している訪日外国人客へのアピールになります。
ただし、キャッシュレス決済の種類によっては、会計の際に飲食店側に手数料が発生するケースがあるため、導入前にしっかり検討しましょう。
ホームページ多言語化とMEO対策
訪日外国人客を集客するのに、多言語翻訳ツールがあると安心です。
たとえば、訪日外国人客からメニューの詳細を聞かれた場合、多言語翻訳ツールを使えば落ち着いて対応できます。
飲食店のホームページでも多言語に対応していれば、さまざまな国からの訪日外国人客が閲覧することができます。
特にインバウンド集客においてMEO対策は非常に重要です。
MEO(Map Engine Optimization)は、GoogleMapsなどの地図検索エンジンでの店舗や施設の表示順位を最適化する施策を指します。
GoogleMapsは世界で最も利用されている地図アプリ。出先で利用しない人はいないのではないでしょうか。また、GoogleMapsは世界220以上の国と地域でサービスを提供しています。
訪日外国人客のみだけでなく、多くの人が利用するGoogleMapsに飲食店を検索上位表示することができれば、インバウンド集客をしやすくなります。
インバウンドが回復している今、訪日外国人客の集客となるMEO対策の準備は欠かせない要素です。
具体的なインバウンドMEO対策については、当社にて独自ノウハウを持っていますのでぜひ一度お問い合わせください。
インバウンド対策の進め方と注意点

インバウンド対策を進めて行くうえで、以下の2点を意識することが大切です。
- 文化の違いへの対応と既存顧客とのバランス
- スタッフ教育とインバウンド対応の共有
注意点を含め、説明していきます。
文化の違いへの対応と既存顧客とのバランス
海外では国によって文化や宗教が違うので、飲食店では提供するメニューやサービスを調整する必要があります。
飲食店なら、ヴィーガン(動物性食品を摂取しない完全菜食主義者)やハラル(イスラム教において神に許されたもの)などへの対応です。
たとえば、イスラム教なら豚肉、アルコールが全体的に禁止されています。食べたり飲んだりすることだけでなく、豚由来の油や出汁なども口にできません。また、食事をする時は右手を使うのがマナーとなっています。
ヒンドゥー教であれば、牛・豚・鶏など肉類全般がNGです。特に牛は、宗教上神聖な生き物とされているため食べることは禁忌行為にあたります。ニラ・ニンニク・玉ねぎのような臭いの強い野菜も食べられません。
人種に問わず、アレルギーにも対応できるようにしておきましょう。
このようにインバウンド集客を積極的に行うのは大事ですが、既存客に影響が出る可能性も考えておく必要があります。
文化や言語の違いから、訪日外国人客の接客対応に手間がかかったり、いつも来てくれる既存客が訪日外国人客の多さで店内に入れないといったケースです。
スタッフの接客教育や既存客に対しての気配りなどもして、訪日外国人客も既存客も気分よく飲食店を利用できる体制をつくりましょう。
スタッフ教育とインバウンド対応の共有
飲食店のスタッフに訪日外国人客の特徴や文化の違いを理解させることも重要です。
具体的には、以下のようなインバウンド対策が考えられます。
- スタッフのインバウンド研修を行う
- 自治体や事業者のパンフレットを活用する
訪日外国人客について理解できれば、スタッフは訪日外国人客のニーズに合ったサービスを提供をしたり、トラブルの回避に繋がります。
スタッフがスムーズに訪日外国人客の接客ができるようにするために欠かせないインバウンド対策です。
インバウンド以外の集客方法と給付金の活用

新型コロナウイルスにおいて、集客や顧客満足度に苦戦中の飲食店に必要になるのが、デジタルツールを活用したDX(Degital Transformation)の促進です。
デジタルツールを活用してお客様の新たなニーズに応じたサービスを提供できれば、効果的に売上や集客の向上ができます。
- DXによる飲食店の変革と事例紹介
- 給付金・補助金を利用したインバウンド戦略
上記2つについて詳しく説明していきます。
DXによる飲食店の変革と事例紹介
DX(Degital Transformation)とは、デジタル技術を活用して生活を良くしていくことです。
飲食店でのDXは、接客や会計、管理などの業務をデジタル化して顧客満足度をあげることを指しています。
すでに、いろんな飲食店が導入しているモバイルオーダーは、待ち時間の削減、混雑緩和、会計の短縮化などの顧客の満足度を上げています。
ただし、デジタル化さえすればDX化が可能というわけではありません。デジタルツールを導入してもメリットを得られなければ、DX化した意味がないのです。
お客様のニーズを考え、デジタルツールを活用してアプローチすることで、顧客満足度をいかに向上させるかを意識しなければなりません。
- 混雑緩和
- 集客力の向上
- スタッフの負担の軽減
飲食店のDX成功事例として、国内外で認知度の高い「マクドナルド」を紹介します。
マクドナルドは、店舗で並ばずに商品を注文できる「モバイルオーダー」を導入した結果、「人件費の削減」「混雑緩和」などの大きなメリットを得て、売上を伸ばしています。
注目して欲しいのはお店だけのメリットだけでなく、顧客満足の向上にも貢献している点です。お客様のスケジュールに合わせた注文や決済ができるようになったので、顧客満足度の向上に繋がりました。
低価格で導入できるモバイルオーダーアプリも増えてきているため、一度検討してみましょう。
給付金・補助金を利用したインバウンド戦略
インバウンド対策には、ある程度の経費が必要になる場合もあります。そのための補助金があるので、活用しましょう。
補助金は、助成金と給付金の2種類があります。違いは交付される目的です。助成金は研究開発費や雇用関係など、個別の項目に対して条件を満たした事業者に投資します。
給付金は助成金以外の補助金を指し、事業者以外にお金を配る際にも給付金が使われます。補助金は原則として返還義務がありません。
インバウンド戦略に使える代表的な補助金は、「事業再構築補助金」です。
事業再構築補助金は、新型コロナウイルスで影響を受けた経済社会の変化に対応するための、事業の再構築に対する補助金になります。
そのため、新型コロナウイルスで打撃を受けた飲食店や事業拡大を目指す飲食店にとって、補助金は非常にメリットの大きい資金調達方法です。
ただし、国や地方自治体が財源となる公的資金であるため、補助金を受けるためには申請や審査が必要になります。
給付金・補助金を受け取るにはそれぞれに条件が設けられています。
補助金ついて知ることは、これからのインバウンド戦略に対する投資とチャンスをつかむことにつながります。大いに活用して訪日外国人客を集客していきましょう。
事業再構築補助金については、下記を参考にしてください。
まとめ:インバウンド戦略で飲食店を成長させる

この記事では、飲食店の成功に繋げるための、訪日外国人客を集客する戦略について紹介しました。
最後のまとめとして以下の2点を取り上げます。
- インバウンド対策のポイントと効果的な施策
- 持続可能なインバウンド集客のために
インバウンド対策のポイントと効果的な施策
インバウンド対策と施策についてのポイントは以下のとおりです。
- 訪日外国人客のニーズを把握する
- 店舗の魅力が伝わるコンテンツを作成する
- 訪日外国人客に効率的に伝わる対策を行う
- インバウンド補助金の利用を検討する
- サイトの多言語化をする
- 訪日外国人客を意識したSNSの運用をする
- キャッシュレス決済サービスの導入をする
- デジタルサイネージを設置する
※デジタルサイネージとは、ディスプレイやプロジェクターなど映像表示装置を利用して情報を発信するシステム
持続可能なインバウンド集客のために
インバウンド対策を行うことで、訪日外国人客を増やし、飲食店における売上と顧客満足度の向上が実現できます。
デジタルツールやデジタルサイネージを使って多言語対応すれば、訪日外国人客に向けて容易にアピール可能です。
時代に応じた集客方法を実施して、インバウンド獲得に向けた戦略を考えていきましょう。

実店舗運営に欠かせない機器を扱うメーカーにて、決済端末や計量包装機の開発運用を経験。店舗に必要な機器を提供するだけではなく、集客を行ない売り上げに繋げるまでをサポートしたい想いから、「STORE FIRST」を掲げる株式会社トライハッチへジョイン。現在はMEOコンサルタントとして、多業界に渡る累計3000店舗以上の集客・販促コンサルティングを行なう。