飲食店やホテル業界といった観光ビジネスにおいて重要な要素となるのが、「インバウンド集客」です。

コロナ禍があけ、再び増加しつつある外国人観光客をどのように自分のお店へ集客するかは売上に直結する重要な要素と言えるでしょう。

ここでは、インバウンド集客の基礎や集客成功のカギ、効果的なインバウンド対策の実例、インバウンド戦略の建て方などを紹介します。

インバウンド集客の未来についても解説しますので、自身の店舗経営の際の参考にしてみてください。

インバウンド集客の基礎知識

インバウンド集客の基礎知識の画像

インバウンド集客の基礎知識がないまま対策を行っても効果的な集客施策となりません。

そこで、そもそもインバウンド対策とはどのようなものか?インバウンド需要の現状と未来予測について紹介します。

また、近年重要になってきているデジタル上でのインバウンド対策についても解説しますので、あわせて参考にしてみてください。

インバウンド対策とは?

「インバウンド」とは、海外から日本へ来日する外国人観光客のことを指す言葉として定着しています。つまり、「インバウンド対策」とは外国人観光客をどのように自分のお店へ流入させるための対策ということです。

インバウンド需要は近年新しくできたものではなく、2015年頃から話題になっており、中国人観光客の爆買いや外国人が日本全国の観光地への来訪など、話題となっていました。

一口にインバウンド対策といっても様々な対策があり、単純に外国人向けサービスを増やす施策やSNSを活用した施策、インバウンドMEO対策など様々な対策があります。

インバウンド需要の現状と未来予測

官公庁による訪日外国人旅行者数・出国日本人数の推移の画像

引用:国土交通省 観光庁

訪日外国人旅行者数をみると、2011年あたりから右肩上がりで上昇しており、コロナ禍前でも大きなインバウンド需要があったことが伺えます。

コロナ禍の影響を一番受けた2020年〜2022年は訪日外国人旅行者数は大きく減少しましたが、コロナ禍があけた現在では訪日外国人旅行者数は回復傾向にあります。

そのため、今後はコロナ禍前の水準もしくはそれ以上にインバウンド需要が高まることが期待できるでしょう。

デジタル上でのインバウンド対策が重要

実店舗のインバウンド対策というと、メニューの翻訳など、店内でできる対策が先行しがちですが、インターネットが発達した現在では、デジタル上でのインバウンド対策も重要と言えるでしょう。

デジタル上のインバウンド対策はSNS対策やMEO対策、多言語対応コンテンツなど様々なものがあり、お店に来店する前の段階で海外のお客様にアプローチが可能です。

インバウンド集客成功のカギ

インバウンド集客成功のカギの画像

インバウンド集客を成功させるためには、自身の店舗の特性にあった施策を選択する必要があります。

ここで紹介するのは以下の4つです。

インバウンド集客を成功させるための施策
  • 外国人目線での対策
  • 多言語対応コンテンツの重要性
  • 外国人観光客向けエクスクルーシブ体験の提供
  • 外国人に向けたブランディング

自身の店舗に取り入れられそうなものがありましたら、参考にしてみてください。

外国人目線での対策

外国人目線で対策というと、難しく感じられるかもしれませんが、「運営している店舗で販売している物を外国人の好みのものにする」「外国語を使用したメニューを作成する」といったものです。

注意したいのは、あまりにも外国人向けのサービスによせてしまうと、国内のお客様を逃す場合がある点です。

見込み客を全て海外のお客様に絞るのであれば、その方向へ振り切るのも一つの手ですが、国内の見込み客を失ってしまう点やコロナ禍の様な状況が今後発生した際に営業が厳しい点などを考慮すると、インバウンド需要のみに特化するのは得策ではありません。

そのため、国内のお客様を確保しつつ、インバウンド需要もとりいれていくのが大事です。

多言語対応コンテンツの重要性

現在はスマートフォンが普及したため、日本語のコンテンツを外国語に変換するのは容易になっています。とはいえ、外国語でできたコンテンツがあると、来日したお客様もすぐに楽しめますので、インバウンド対策として有用なものと言えるでしょう。

また、店舗内だけでなく、自社のホームページに日本語のコンテンツだけでなく、海外の方へ向けたコンテンツを用意するのも良いでしょう。

普段から利用しているサイトの店舗でしたら、来日の際に店舗への来訪が期待できます。

外国人観光客向けエクスクルーシブ体験の提供

「エクスクルーシブ体験」とは限られた方向けに高級で特別な体験を提供することをいいます。

宿泊施設であれば、通常のコースとは別に外国人観光客向けの特別コースを用意することで、海外の富裕層客を狙ったインバウンド対策が考えられます。

顧客単価が高いため、売上を大きくアップすることも期待できるでしょう。

外国人に向けたブランディング

外国人に向けてブランディングを行うことも重要です。外国人目線で考えて、「そのお店では何ができるのか」「何が便利なのか」といった部分をアピールしましょう。

観光庁「平成26年訪日外国人観光客の地方訪問状況」の画像

引用:電通報 インバウンドにおける地域ブランディング

上記のように日本に訪れた外国人観光者の目的や、自社の強みは何かを参考にしながらブランディングをするのが大切です。

外国人向けのブランディングを行う上で、XやYouTubeといったSNSを活用すると、さらに効果的なインバウンド対策となりますので、ブランディングを行う際は情報発信のツールとして活用してみましょう。

効果的なインバウンド対策の実例

効果的なインバウンド対策の実例

これまでインバウンド対策の施策を紹介してきましたが、実際にインバウンド対策をした結果、どのような効果が得られたのか、その実例を紹介します。

ここでは飲食店、ホテル業界においてインバウンド対策を紹介します。また、SNSを活用した集客方法や補助金を利用した事例などを紹介しますので、参考にしてみてください。

飲食店での成功事例

海外では現在、ヴィーガンやベジタリアンといった具合に食の多様性が広がってきています。そのため、「ヴィーガンやベジタリアン向けのメニューを用意しておく」施策を行った結果、海外の観光客の誘致に成功した実例があります。

その他にもハラルフードと呼ばれる、豚肉やアルコールを使用しない食事を用意し、イスラム教徒のお客様を呼び込むといった実例もあります。

飲食店であれば、海外のトレンドを調べながら、メニューに組み込めそうなものがあれば積極的に取り込んでみましょう。

ホテル業界での取り組み

ホテル業界では今後、少子高齢化による人口減少問題がダイレクトに影響する業界となっており、外国人観光客にアプローチするのは重要課題です。

ホテル業界での取り組みとしては外国の方向けの料理を用意したり、体験コースを作ることで、インバウンド対策に成功したケースがあります。

訪日外国人向けの日本料理を用意したり、伝統的な体験ができるコースを用意し、より日本を感じるプランすることで、来店率をあげた事例もありますので、自社でできるコースや料理を考えて新設してみましょう。

また、外国人観光客がホテルを利用しやすいように多言語に対応することも大切です。多言語を習得したスタッフを雇うのが最も良いですが、セルフチェックインシステムを導入するのも一つの手です。

セルフチェックインシステムとはAIが本人確認するため、スタッフの労力を割かずに多言語対応ができるのがメリットといえるでしょう。

SNSを活用した集客方法

SNSを活用した集客方法としては以下のような実例があります。

寿司や和食、懐石料理を提供しているがんこフードサービス会社では、中国人観光客が増加している点に着目し、中国のSNSであるWeiboで運用を行い、中国人観光客を呼び込むことを実現しています。

石川県の老舗温泉宿泊施設である加賀屋ではハッシュタグやキャンペーンを利用し、、SNS上でPRを行った結果、多くのフォロワーを獲得しました。

ただSNSのアカウントを作成するのではなく、外国人観光客がよく使うSNSを積極的に利用し集客を行いましょう。

補助金を利用した事例

インバウンド向けの事業に費用を使う場合、補助金を利用できます。インバウンド補助金を受給する際の条件はありますが、補助金をもらうことで、コスト削減が可能です。

インバウンド補助金の対象となる事業は様々ですが、以下のようなものが事例として挙げられます。

インバウンド補助金を利用した事例
  • 海外の方に向けたWebサイトの作成
  • 現在のWebサイトを多言語に対応させる
  • 通信環境の向上
  • キャッシュレス決済の充実
  • トイレを和式から洋式へ変更する

特にキャッシュレス決済については、海外ではスタンダードとなっているところも多いので、日本へ観光にきた際に「キャッシュレス決済ができない」といったトラブルがあると負のイメージを持ってしまうことも考えられます。

インバウンド補助金の対象となる事業は+αの部分ではない基礎的な部分が多く、補助金を活用してお店を整えていくと良いでしょう。

インバウンド補助金の公募情報については、国際観光(観光庁)観光支援づくりに対する支援メニュー集などで確認できますので、自身の店舗で受給できるか確認してみましょう。

インバウンド集客戦略の立て方

インバウンド集客戦略の立て方の画像

インバウンド対策を行う際に闇雲に行動すれば結果が出るという訳ではありません。インバウンド集客戦略を立てる際に役立つ目標設定やKPIの定義、ターゲット顧客の理解、ペルソナ設定などを紹介します。

今回紹介するものはインバウンド集客に役立つだけでなく、経営をする上でも重要な部分となりますので、参考にしてみてください。

目標設定とKPIの定義

インバウンド集客の施策を行った際、実際にどれくらいの効果があったのか、目標値に達していたかを計測するには事前に目標設定やKPIを設定するのが大切です。

KPIとは「Key Performance Indicator」を略したもので、重要業績評価指標が和訳にあたります。各プロセスにおいて目標設定を行い、やらなければならないタスクを明確化することはもちろん、各プロセスにおいて目標達成ができているかどうかを把握できます。

KPIを設定すると、目標に対してどの程度達成できているのか一目瞭然となるため、次の施策や改善にもつなげやすくなるメリットがあります。

ターゲット顧客の理解とペルソナ設定

ターゲットとしている顧客の理解とペルソナ設定は必須と言えるでしょう。

顧客の理解は、「顧客のニーズを把握して、何を望んでいるのかを理解すること」、ペルソナ設定は、イタリア在住の男性20代といったようにターゲットとなる顧客を仮定することをいいます。

例えば、雪国でスノボを楽しむ方が多く宿泊するお店において、スノボ以外のコンテンツを店内に増やしたとしてもミスマッチとなる場合があります。

せっかくインバウンドの施策を実行したのに、効果がないどころか逆効果となってしまっては元も子もありません。

外国人観光客が自社に求めるニーズをしっかり把握して、ペルソナ設定をおこなうことにより、ニーズにあったサービスを用意しましょう。

コンテンツマーケティングの重要性

インバウンドマーケティングと同時に重要なのがコンテンツマーケティングです。日本人向けのサイトを外国語対応したり、国内サイトとは別に外国人観光客向けのサイトを作り、サイト内コンテンツを充実させましょう。

ターゲットである外国人観光客が満足するコンテンツを作成することで、自社のファンをつくることが大切です。

インバウンド集客を成功させるツールとテクニック

インバウンド集客を成功させるツールとテクニックの画像

インバウンド集客を成功させるために様々なツールやテクニックがあります。ここでは数あるツールやテクニックの中でも一部を紹介しますので、活用できるものがありましたら、参考にしてみてください。

必須のデジタルツール紹介

インバウンドマーケティングを行う際に必須なツールは様々ですが、例を示すと以下の通りです。

外国人観光客を集客するためにTripAdvisorやYelpといった海外の口コミサイトに自社の情報を掲載し、外国人観光客が自社を探し出しやすい状況を作りましょう。

また、Kakao PayやAlipay、PayNowといった海外のキャッシュレス決済を導入することで、外国人観光客がスムーズに決済できるようにするのがベストです。

SNSを活用した外国人観光客へのアプローチ

SNSを活用した集客方法としては2種類あります。一つは、自社のSNSを開設して、自社のコンテンツを充実させることにより集客を行う方法。もう一つの方法は、海外のインフルエンサーに協力もしくは依頼をして宣伝してもらう方法です。

例えばホテル業界において、インスタグラムを活用すると、映像や写真を使って視覚的にアピールできますので、言語の壁を気にしないで良い点が大きなメリットと言えるでしょう。

また、海外のインフルエンサーに協力してもらった場合、「インフルエンサーがおすすめした所に行ってみたい」という方達はたくさんいらっしゃいますので、大きな宣伝効果が期待できます。

インバウンドMEO対策とは?

MEO対策とは「Map Engine Optimization」と呼ばれるGoogle MapsやGoogleで店舗を検索する際に、検索結果の中でより上位になるための対策となります。

例えば、「東京 おすすめ 飲食店」と検索した際にGoogle Maps上で自分のお店が上位にくるように施策を行うことを指します。

MEO対策では以下がメインの評価軸となっています。

インバウンドMEO対策
  • 検索されたキーワードと自分の店舗情報の関連性
  • 検索したユーザーと店舗の距離
  • 店舗の知名度

インバウンド対策のMEO対策としては上記以外にも「Googleマップのビジネス名を日本語だけでなく、多言語で登録」、「翻訳できないビジネスの情報は英語で表記する」、「Google Maps以外の地図アプリへの登録」などがあります。

特に海外の方だと、Google Maps以外の地図アプリを使用している方も多く、「TripAdvisor」、「Apple Maps」などを活用してみましょう。

インバウンド集客の未来

インバウンド集客の未来の画像

インバウンド集客の方法やトレンドは日々変化しており、目まぐるしく変化していく状況に対応していく必要があります。

ここでは新たなインバウンド需要の捉え方やインバウンドマーケティングの進化について紹介します。

新たなインバウンド需要の捉え方

インバウンド需要は時勢によって変化します。コロナ禍前は右肩上がりとなっていたインバウンド需要はコロナ禍が始まるとほとんどなくなってしまいました。

しかし、現在はコロナ禍が終わったことや円安のおかげでインバウンド需要は再度活気に満ちています。

このようにインバウンド需要は外的要因によって大きく変化することに注意が必要です。

インバウンドマーケティングの進化

インバウンドマーケティングの中でも最新のトレンドとなっているのが、VRや動画コンテンツです。

VRや動画コンテンツは海外の言語が分からない方でも楽しむことができるコンテンツのため、言語の壁を超えて外国人観光客にアプローチができます。さらに短い動画を投稿できるTikTokは若い世代を中心に爆発的に利用されており、TikTokでバズると大きな宣伝効果が期待できるでしょう。

まとめ

本記事のまとめの画像

今回はインバウンド集客の基礎や集客成功のカギ、効果的なインバウンド対策の実例、インバウンド戦略の建て方を紹介しました。

訪日外国人向けのマーケティング戦略

外国人観光客のマーケティング戦略としては多言語対応やSNSなど様々な手法がありますが、重要な部分は外国人観光客が使いやすいサービスを実現したり、多くの方にアプローチしたりすることです。

同じ業界のインバウンドマーケティング手法を学び、取り入れが可能なものがあったら、どんどん試していきましょう。

地方創生とインバウンド

人口減少が大きな問題となっている日本では国内需要だけでは成り立たない地域も出てくるでしょう。そこで、重要なものがインバウンドです。外国人観光客を呼び込むことに成功すれば、地方の経済が活性化し、若い世代の雇用創出にもつながります。

地方創生を行い、地域を活性化させていきたいのであれば、インバウンドマーケティングを駆使して、外国人観光客を呼び込んでみましょう。